ストレージデバイス (補助記憶装置)

HAL9000シリーズコンピュータは、ストレージデバイスとして ホログラフィックメモリ を採用している。(ホログラフィック・メモリ/ホログラフィックメモリー)
ホログラフィックメモリは、信号光 (情報光、データ光) と参照光という二種類のレーザー光による干渉パターン (干渉縞) を利用して 三次元の物体を三次元の画像・映像として記録・再生する、いわゆるホログラフィー技術 (ホログラム技術、立体写真映像技術) を応用した未来志向のストレージで、その原理自体はレーザー光発生装置が米国で誕生した1960年よりも以前に (1950年代に) 確立されていた。

アーサー・C・クラークは、既に現実社会で研究開発されていたホログラフィックメモリに 彼独自のSFテイストを加味して 人間の脳神経細胞 (ニューロン) を髣髴とさせる ストレージを創作し、 「任意の学習プログラムに従って神経回路網を自動的に発生させる --- 自己複製させる (*)」、 「人工頭脳を人間の頭脳の発達に酷似したプロセスで成長させる (*)」、 「人脳の活動の大部分を、人脳よりはるかに優れた速度と確実さで再生する (*)」 コンピュータシステムに必要不可欠のストレージデバイスとして作品中に組み込んだのである。

HAL9000シリーズ (3号) の 「事件当時の記憶 (コンピュータパラノイア が発症した当時の記憶)」 はホログラフィックメモリに記憶されていたが、2010年のチャンドラ博士は、その特定日時の記憶を消去するために、磁気テープなどによる磁気型記録全盛だった当時のプログラム型消去法である 「サナダムシ=テープワーム (**)」 を使った。 三次元的にページデータ (数千ビット〜数万ビット) という情報単位で幾重にも重ね書きされているホログラフィックメモリには、二次元的にビット単位で記憶・再生される磁気型メモリに対するような単純な消去方法が無効だったからである。

最新のテクノロジーが抱える不具合に対して 古典的なテクノロジー・アイデア・テクニックこそが最も有効だというパラドックスはとても興味深い。

参考
2001年宇宙の旅 (早川書房)
2010年宇宙の旅 (早川書房)
2001 A Space Odyssey (MGM)
台本(Internet Resource Archive)
(*) 2001年宇宙の旅 (早川書房) から引用
(**) 2010年宇宙の旅 (早川書房) から引用
2001 A Space Odyssey (Paperback)
2010 Odyssey Two (Paperback)
2010 Odyssey Two (MGM.UA)
その他

Writer: masaakix Web site: http://www.masaakix.interlink.or.jp/

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