2001年宇宙の旅、2010年宇宙の旅。両作品におけるHALの位置づけは極めて難解である。コンピュータという単純な存在でないことは確かであるが、生命体ともいえない。プログラムされた見せかけの感情のはずなのに、アルゴリズムの範囲内とも思えない。

「自我補強」、「自動思考」。人間の脳にみたてたこれらユニット群は 「多重冗長性」の支配下で自我を保ち、ホログラフィック・メモリへの二次元的アクセスを拒否する。そして、パラノイアに至っては、模倣という概念を超越してしまうのである。

コンピュータの誤動作に人間の病理を当てはめたクラークの背後には 「シリコン生命体」 という目論見が見え隠れする。バイオチップ。半導体素子の限界を打ち破る生物システム。脳細胞とシナプス。ニューラルネットワークを模倣したニューロコンピュータ。

模倣が実体に限りなく接近するとき、負の部分も受け継がれるに違いない。神経症、妄想、偏執。 模倣を超越した狂気、コンピュータ・パラノイアである。

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(参考) 2001年宇宙の旅 (早川書房)、2010年宇宙の旅 (早川書房)

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