ディスカバリー号とアポロ8号ミッション

005. 二人の 「ボーマン」 という名の船長では、船長たちの 「名前」 に着目したが、両ミッションの内容についてはどうだろうか。

アポロ8号ミッションは月面着陸のデモンストレーション的ミッションだったが、人類初の月周回飛行であり、月の裏側を初めて肉眼で観察した画期的なものだった。

しかし、(アポロ・マニアには周知の事実だろうが) そもそもアポロ8号は、地球周回軌道上で月着陸船をテストするミッションだったはずだ。これが急遽 月周回飛行にシフトされたのである。その経緯は二つに分かれる。

一つは 月着陸船 (LM, Lunar Module) の開発の遅れだ。アポロ計画で有人飛行と言えるのは アポロ7号 (AS-205) 以降である。1号 (AS-204) の悲惨な事故で計画は当初から遅れぎみではあったが、それでも、司令船 (CM) 機械船 (SM)サターンロケット (I/IB/V) などは順調に開発が進んできた。これに対し、「月着陸」 という新しい概念の下で開発していた LM/月着陸船は失敗の連続である。アポロ9号 (AS-504) になって ようやく宇宙空間での LM 有人テストが始まったのだ。

そして二つ目である。それは CIA の調査報告だ。当時のソビエトが近日中に有人の月周回飛行を行なうというのだ。プロトンロケットゾンド (ZOND) 宇宙船との組み合わせである (もっとも、この報告の通りに実施されることはなかったが)。

アポロ計画の誕生はソビエトの宇宙開発を睨んだものだ。そのアメリカが、人類初の月周回飛行という勲章を みすみす敵に譲るはずもなかったのである。

さて、実際には三つ目があるのだが これは次の機会に。

ここで、小説 2001年宇宙の旅のディスカバリー号ミッションを検証してみよう。このミッションも、そもそもは月面モノリスが発掘される以前から進んでいた人類初の木星への有人往復飛行計画 (「木星計画(*)」) だったのである。それが、実施される直前に土星 (小説では) への有人片道飛行計画、それも、真の目的が故意に隠されたものに急遽変更されてしまったのだ。

アポロ計画、すなわち NASA と、2001年宇宙の旅、すなわち映画と小説は、年代的にも事実面 (協力関係や影響力) でも重なって見えるのである。

参考
National Aeronautics and Space Administration (NASA) 月をめざした男たち (NHK) 2001年宇宙の旅 (早川書房) 2010年宇宙の旅 (早川書房) 2001 A Space Odyssey (Paperback) 2010 Odyssey Two (Paperback) 2001 A Space Odyssey (MGM) 2010 Odyssey Two (MGM.UA) Script: Internet Resource Archive (*) 2001年宇宙の旅 (早川書房) より引用 (**) 2010年宇宙の旅 (早川書房) より引用

Writer: Masaakix Web site: http://www.masaakix.interlink.or.jp/

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