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SATURN 01-10 AS 201 202 203 APOLLO 01 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
Summary Cameras Lunar Surface Landing site Eva Lunar Samples Science Experiment 1 SIM Science Experiment 2
Mission type Launch Launch vehicle Payload (Spacecraft) ALSEP Mission Commander Command module pilot Lunar module pilot Translunar injection CSM-LM docking Lunar orbit insertion LM's crews CSM-LM separation Lunar landing Lunar Landing site Lunar surface EVA-1 Lunar surface EVA-2 Lunar surface EVA-3 Lunar Roving Vehicle Lunar surface stay time Lunar samples Lunar liftoff LM-CSM docking LM Impact moon Lunar orbits Transearth injection Duration Earth Splashdown Depository |
1971年7月26日 午前9時34分 (EST) 、ケープケネディ Complex 39 Pad A。稲妻 (*1)に祝福され、4回目の有人月面着陸を目指してアポロ15号は打ち上げられた。ランディング・サイトはアペニン山脈に隣接するハドリー・アペニンだ。 クルーは船長のデービッド・スコット、司令船パイロットのアルフレッド・ウォーデン、そして月着陸船パイロットのジェームズ(ジム)・アーウィンである。 [最初のJ mission] アポロ15号ミッションは4回目の有人月面 (着陸) 探査として位置づけられるが、一方、最初の J mission でもあった。 J mission はアポロ15号、16号、17号にのみ該当するミッション・タイプで、その意味するところは、より広範囲に、より多量の、より高水準な、科学的(&化学的)データを収集するためのミッションと解される。 ランディング・サイトに敢えて複雑な地域(地質学的な見地からの重要拠点)を選び、いよいよ「核心」をつく月面探査が開始されるのだろうか。ハード面(モジュールや装備・機材等)の充実度にも目をみはる。 [興味深いランディング・サイト] アペニン山脈(Montes Apenninus /20N,3W)は、月の表側では最大規模のベイスン(Basin /直径300km以上の規模を持つ巨大衝突盆地) である 雨の海(Mare Imbrium /Imbrium impact Basin /直径約1160km) と 蒸気の海(Mare Vaporum /直径約230km) に挟まれた地形で、その全長は600km以上、標高は優に5000mを超える。月面を代表する大山脈(*2)である。蒸気の海側は比較的なだらかな様相を見せる同山脈だが、一方、雨の海側では、急斜面を形作って壁のように立ちはだかっている。 地質学的な意味からも極めて複雑な歴史を辿ってきたエリアであり、月の歴史・構造を解くための貴重なデータが眠っていることは間違いない。 アポロ15号は、このアペニン山脈の北側に位置するハドリー谷(Rima Hadley、25N,3E)の近くのハドリー・アペニンにランディングした。アポロ12号で習得されたピンポイント・ランディング技術(複雑なエリアへの正確な着陸を可能とする技術)の本領発揮である。 [J-missionに相応しい充実したハード] 今回の15号より機械船 (SM) にはSIM (Scientific Instrument Module) がマウントされることになった。目的別に取りそろえた各種撮影機材 (カメラ等) やレーザー高度計、アルファ線・ガンマ線・X線を対象とした各種スペクトラ・メーターなどを使って、高水準なデータを広範囲にわたって豊富に収集することが可能となっている。 15号と16号のみで実施されたサブ・サテライト (Subsatellite) も注目に値する。「サブ」 というも、実際の働きは 「メイン」 に近かったのではないかと思われる。なお、この 重量約38kgの人工衛星(地球側から見れば無人孫衛星)は、クルーが地球への帰還に先立って月周回軌道上に投入する。アポロ宇宙船が地球に帰還した後も、重力や磁場(磁気)及び帯電粒子の地域的・時間的変動を観測し続けるタフな人工衛星である。 その他、15号以降のミッションでは LRV(月面車)が LM(月着陸船)に搭載されている。全長 10フィート (3.05m)、幅 7フィート (2.135m)、車高 45インチ (1.143m)。車重は、455ポンド (約206kg)。各種装備をまとって時速16kmで月面上を移動することが出来る。定員は2名。 EVA (月面船外活動) も3回実施されることとなり、LRV の使用(17分程度の走行だっが)と相まって広範囲な活動が容易となった。 収集されたサンプルの中には太陽系の誕生時に迫らんとするものもあり(ジェネシス・ロック /創世記の石)、月の歴史を解明することの波及効果を改めて実感することになるのである。 まさに、有人/無人、月周回軌道上から、月面/ランディング・サイトから、そして元素 (スペクトラ・メーター) からと、この最初の J mission は「総力戦」の様相を呈していたのだ。 例によって「収集データ」 の全てが公表されたわけではないが、ハード面、ミッションの内容、それに要した時間、頻度、計画・予定の変更(時間が延長されたイベント等に注目)などから、かなりの成果があったことは推測できる。11号〜14号で目安をつけて 15号〜17号の J mission で決定づけるのだろうか。 なお、今回のミッションでは、殉職した宇宙飛行士の名(*3)が記された メモリアル・プラーク (ボード) や人間を象った物体等 が月面に設置されている。 ----- アペニン山脈(Montes Apenninus /20N,3W /全長約600km、標高約5000m)の他、コーカサス山脈(39N,9E /全長約520km、標高(山頂)約6000m /アペニン山脈のお隣)、アルプス山脈(Montes Alpes /全長約250km、標高(山頂)3600m)、タウルス山脈(26N,36E /アポロ17号のランディング・サイト近く)などが馴染み深い。 (*3) 殉職した宇宙飛行士の名: 米国の飛行士(アストロノート)のみならず旧ソビエトの飛行士(コスモノート)も含まれている。 アポロ1号(AS-204)のグリソム(Virgil I. Grissom)、ホワイト(Edward H. White II)、チャフィー(Roger B. Chaffee)、ソユーズ1号のコマロフ(Vladimir Mikhailovich Komarov) などである。 このことからも、「当時の米ソ両国をリードしていたのは(表向きの)競争原理のみではなかった」ことが窺い知れる。 |
70-millimeter Hasselblad Camera 16-millimeter Maurer Data Acquisition Cameras (DAC) Lunar Surface TV Camera Mapping Camera System Panoramic Camera 70-millimeter Hasselblad EL Camera 35-millimeter Nikon Camera Westinghouse Color TV Camera |
イメージ下端(右寄り)の隆起した地形がアペニン山脈(Montes Apenninus /20N,3W /全長600km以上、標高は約5000m) で、ちょうど雨の海(Mare Imbrium (Basin) /直径約1160kmの巨大衝突盆地) と 蒸気の海(Mare Vaporum /直径約230km) に挟まれた格好となっている。地球上でいえばカリフォルニアのシェラネバダ山脈のようなものだろう。 アポロ15号 LM は、この 月面を代表する大山脈の北側に位置するハドリー谷 ※(Rima Hadley、25N,3E) の近くに着陸した → ハドリー・アペニン(Hadley Apennine)。 雨の海側のアペニン山脈は、なだらかな傾斜の蒸気の海側とは様相を異にし、まるで壁のような急斜面を形作っている。 イメージ上端(右寄り)の隆起は、520kmの全長と6000mの標高(山頂)を誇るコーカサス山脈(39N,9E)で、その左側には アリスティリス・クレーター(Aristillus crater /33.9N,1.2E /直径約55km ) と アウトリュコス・クレーター(Autolycus crater /30.7N,1.5E /直径約40km) が見えており、更にその斜め右上にはカシニ・クレーター(Cassini crater /40.2N,4.6E /直径約57km) を確認することが出来る。 このイメージは Fairchild Metric camera (APOLLO-15 SM /SIM) で撮影された。 ※ ハドリー谷(Rima Hadley): 月面を這っているような裂溝のこと。Hadley Rille。 |
右のイメージは、エリアをランディング・サイト(ハドリー・アペニン)付近に絞ったものだ。ハドリー山(Mons Hadley /27N,5E)とハドリー・デルタ山(Mons Hadley Delta /26N,4E)に囲まれたエリアがアポロ15号の着陸地点である(イメージ真中の黒っぽい「海」の部分)。 イメージ上端に見えているクレーターはハドリー B ※(Hadley B crater /27.2N,4.8E /直径約9km) で、イメージ下端のアラトス・クレーター(Aratus crater /23.6N,4.5E /直径約11km) ともども比較的目立つ存在となっている。 このイメージは Metric camera (APOLLO-15 SM /SIM) で撮影された。 ※ ハドリー B クレーター: サントス・ドゥモント・クレーター(Santos Dumont crater)のことである。 |
右上のイメージは、嵐の大洋 (Ocean of Storms=Oceanus Procellarum /月最大の海) に位置するアリスタルコス高原をとらえている。大きな二つのクレーターは、左が直径約40kmのアリスタルコス・クレーター (Aristarchus Crater /23.7N,47.4W)、右が直径約35kmのヘロドトス・クレーター (Herodotus Crater /23.2N,49.7W) である。それらクレーターの中間辺りから始まる裂溝のような蛇行した谷の連なりがシュレーター谷 (Vallis Schroteri /26N,51W /全長約160km) で、その上端部分 (南側) はコブラの頭のような不気味な地形 (コブラ・ヘッド /Cobra's Head) を月面に刻んでいる。SM (機械船) にマウントされた SIM によって得られたマルチ・スペクトラル・イメージ (分光写真) は、このエリアが地質学的にみて非常に複雑であることを証明した。 右中央のイメージも、同じく白く輝くアリスタルコス・クレーターをイメージ右斜め上にとらえている。アリスタルコスの右にはヘロドトス・クレーターが、左斜め下にはクレーターが欠けたような地形が独特のプリンツ (Prinz /直径47km /25.5N,44.1W) が見えている。 右下のイメージには、別角度からとらえられたアリスタルコスとヘロドトスに混じってドーム (ヘロドトス・オメガ /Herodotus ω) がはっきりと写っている。 光条システムのほぼ中心に位置しているアリスタルコス・クレーターは注目すべき存在だ。 1963年10月29日、米国 (アリゾナ) のローエル天文台はアリスタルコス・クレーターの周辺 (外輪山などの数カ所) に赤い灯がともっているのを発見する。 同天文台は、翌月 (1963年11月27日) にもこの現象を目撃するが、この時は、他の複数の天文台がこの現象を確認している。月面上ではこのような自然現象 (TLP /Transient Lunar Phenomena) が度々観測されているが、この若い (約4億5000万年前にできた) アリスタルコス・クレーターでは発光現象 (白く光る) や 火山現象 (赤く光る) 、あるいは、かすみ・もや (ガスの噴出?※) をはじめとする一時的な自然現象が時々認められ、そのTLP件数はトータル220件を優に超えているのである。 なお、TLPに関してはアポロ12号で観測・撮影された アルフォンスス・クレーター (Alphonsus Crater /13.7S,3.2W /直径約108km) も参照されたし。 1958年11月3日にクリミヤ天文台 (旧ソ連) が発表した 「アルフォンスス・クレーターからガスが噴出している (撮影されたスペクトル写真には炭素分子の吸収帯が認められた)」 との観測結果こそが TLP という概念を世に広めるきっかけとなったからである。 - - - - - ※ 2005年10月、NASAより、ハッブル宇宙望遠鏡による高精度紫外線観測で月面上広範囲に分布するチタン鉄鉱を確認できたとのリリースがあった。 観測対象エリアは、アポロ15号・17号のランディング・サイトと、アリスタルコス・クレーター (Aristarchus Crater /23.7N,47.4W) 及びシュレーター谷 (Vallis Schroteri /26N,51W)で、月面上にはチタン鉄鉱=イルメナイト (FeTiO3) が豊富に存在することを再確認したことになる。もっともこれは、アポロ15号及び16号で行われた Gamma-ray Spectrometer 実験 及び持ち帰ったサンプルなどから既に予想されていたことだったが、、、 |
このイメージは、雨の海(Mare Imbrium (Basin) /直径約1160kmの巨大衝突盆地) の南端付近をとらえている。 コペルニクス・クレーター(Copernicus crater /9.7N,20.1W /直径約93km)が放つ光条が到達しているこのエリアは、主に玄武岩で構成されているものと思われる。 イメージ中の地形の影が長いのは太陽の角度が低いからで、それによって地形の凹凸が際立って見える。左やや下側に見えるピークがラ・イール山(Mons La Hire /28N,25W)で、平地からおよそ1.7km隆起している。山脈等に含まれない独立峰ゆえに非常に目立つ。木曾御岳山をそっくり月面に持ってきたようなものだろうか。人工的な様相が目を引く。 イメージでは見えていないが、右下端付近には、これまた目立ちすぎるランバート・クレーター(Lambert crater /25.8N,21.0W /直径約30km)が存在している。なお、同クレーターの南側に隣接するランバートR・クレーターは、「お化けクレーター ※」として知られている。 このイメージは Metric camera (APOLLO-15 SM /SIM) で撮影された。 ※ お化けクレーター: ある条件が揃わないと観測できない(クレーターとして見えない)対象である。 |
月の裏側(farside)を支配するツィオルコフスキー・クレーターである。Latitude:21.2S、Longitude:128.9E、直径は約185km ※。アングルの関係からか、火口の内側のダークで滑らかな部分が浮き上がって見える。この滑らかさは、ここが衝撃によって溶解したことを意味しているともいわれている。「海」と同様の生成過程を経た可能性があるのだ。このイメージは、Metric camera (APOLLO-15 SM /SIM) で撮影された。 なお、ツィオルコフスキー・クレーターはアポロ8号、アポロ13号、ルナ・オービター3号でも撮影されている。 ※ 漆黒のエリアは直径約125km〜145km、中央付近の火口島らしき地形は直径約40km。 |
ツィオルコフスキー・クレーターを更にクローズアップしたイメージである。このイメージを眺めていると火口の内側のダークな部分(Mare area /直径約125km〜145km)の質感が伝わってくる。月の裏側特有の粗野な質感とは全く逆で、極めて異質だ。「海」のように滑らかで湿気さえも感じるのである。このイメージも、Metric camera (APOLLO-15 SM /SIM) で撮影された。 |
イメージは、危機の海(Mare Crisium /直径約570kmの巨大衝突盆地 /マスコンが存在)の西側部分に隣接するエリアをとらえている。危機の海はイメージ上側の右端(黒っぽい部分)に位置している。中央で鮮やかに光条を放っているのはプロクロス・クレーター(Proclus crater /16.1N,46.8E /直径約28km)で、その光条は、イメージ左下端の暗いエリア ※ とのコントラストを演出している。斜め左上に見える大きなクレーターはマクロビウス(Macrobius crater /21.3N,46.0E /直径約64km)。このイメージは、Fairchild Metric camera (APOLLO-15 SM /SIM) で撮影された。 ※ イメージ左下端の暗いエリア: 眠りの沼(Palus Somni)と呼ばれるこの陸地部分は、プロクロス・クレーターの光条に演出され、危機の海と静かの海(Mare Tranquillitatis /Sea of Tranquility)を分かつ「境界」の役目も果たしている。満月の時は、光条と眠りの沼を観察するのに好都合となる。 |
ランディング・サイトのハドリー・アペニン(Hadley-Apennine /Green Cross)は、月における最大の山脈であるアペニン山脈(Montes Apenninus /20N,3W /全長600km以上、標高は約5000m)の北側に位置するハドリー谷 ※(Rima Hadley、25N,3E)の近くにある。雨の海(Mare Imbrium (Basin) /直径約1160kmの巨大衝突盆地)側のアペニン山脈は急傾斜となっているので、おそらく、ハドリー・アペニンからの景観は荒々しいものだったに違いない。 ハドリー谷からアルキメデス・クレーター(Archimedes crater /29.7N,4.0W /直径約83km)までの北西方向には腐敗の沼(Palus Putredinis /27.0N,)が広がっている。 今回のミッションでは EVA(月面船外活動)が3回実施され、サンプル採取や各種実験が行われた。 月面車 (Lunar Roving Vehicle /LRV) の使用によって行動範囲が広がったことも注目に値する。 ※ ハドリー谷(Rima Hadley): 月面を這っているような裂溝のこと。Hadley Rille。 EVA-1 /First Extravehicular Activity /6 hours 33 minutes
EVA-2 /Second Extravehicular Activity /7 hours 12 minutes
EVA-3 /Third Extravehicular Activity /EVA-3 was shortened to 4 hours and 50 minutes ※
※ 3回目の EVA は、月面離陸の予定時刻との関係から短縮された。 |
このサンプルは ジェネシス・ロック(Genesis Rock /創世記の石)と呼ばれている。 なぜそう呼ばれるのかというと、約45億年前 ※の岩石と推定されるからだ( 「40億年前」 に種々の要素を加味して 「45億年前」 と推定)。それは、太陽系が誕生した年代(45億6000万年前)に接近しているのである。 LM パイロットのジム・アーウィンが2回目の EVA (月面船外活動 /EVA-2 Station 7) において、神の啓示をうけて採取したといわれている。 ※ アポロ16号ミッションで採取された 「Anorthosite(Sample no.60025)」 は これよりさらに古かった。 |
Sample No. 15445 |
右のサンプルは、約38億4000万年前(or 38億5000万年前) に雨の海 ※(Mare Imbrium (Basin) /直径約1160kmの巨大衝突盆地) を誕生させた衝撃によって溶解→生成された岩石と見られている。直径6cm、重量287g。 ※ アペニン山脈(Montes Apenninus /20N,3W /全長600km以上、標高は約5000m) の北側に位置するハドリー・アペニン(Hadley Apennine /アポロ15号ランディング・サイト) は、雨の海のちょうど縁(周壁)の部分にあたる。 |
Basalt No. 15016 |
このサンプル 15016 は、直径13cm、重量923g の玄武岩(Basalt /火山岩)である。「Impact Basin(巨大衝突盆地)※」などという概念が今ほど一般的でなかった頃は、「月のクレーター」 → 「火山の火口」 → 「軽石」 という安易な論法が横行し、月の岩石はアバタ面の軽石ばかりだと思われていたようだ。 ※ Impact Basin: インパクト・ベイスンは、直径が300km以上の規模を持つ巨大な衝突盆地(隕石/天体衝突の衝撃によって誕生した盆地)のことを指す。 雨の海(Imbrium Basin = Mare Imbrium)、東の海(Orientale Basin = Mare Orientale)、湿りの海(Humorum Basin = Mare Humorum)、南極−エイトケン盆地(South Pole-Aitken Basin)など、多数存在。→ Moon Map |
Green glass clod Sample No. 15426 |
Green glass clod 15426 は爆発性の火山噴火による産物とされている。月表面下約400kmのところで溶解していた物質から生成されたようだ。 なお、このサンプルが緑色なのはマグネシウムが多量に含まれているからだ。 同種のサンプルがアポロ17号でも採取されている。 |
SIM (Scientific Instrument Module) |
上の左側イメージの、剥き出しの機材群が、アポロ15号の機械船 (SM) にマウントされていた SIM (Scientific Instrument Module) である。 Metric Camera、Panoramic Camera、Stellar Mapping Camera、Mapping Camera System、レーザー高度計、スペクトラ・メーター (アルファ線 /ガンマ線 /X線) 、などで構成され、目的別の高水準な撮影・実験を可能としている。上の右側イメージは機材の配置図。 撮影済みのフィルム (カセット/マガジン) は大気圏再突入までに EVA (宇宙遊泳) によって回収される。 SIM は15号、16号、そして17号にマウントされていた。 SIM において行われた実験は以下の通り。 Metric and Panoramic cameras /SIM 系統的、組織的な月面の撮影。 Laser Altimeter /SIM レーザー高度計。 S-Band Transponder Experiment /SIM この実験は、月周回軌道上の宇宙船(CSM)と地球で電波をやり取りしてその電波の周波数の変移(ドップラー変移)を測定し、正確な宇宙船の速度(変化)を求めるものである。具体的には、2115 MHz の電波を地球側から宇宙船に送信し、それを受けた宇宙船側が地球に再送信する。0.01 Hz(0.6 mm/sec)の変移まで識別可能である。但し、宇宙船が月の裏側に入っている間は実験が行なえない。 なお、この実験は14号、15号、16号、そして17号で行われた。 宇宙船の速度(変化)を得ることの意義は、それによって「月の重力の位置的な変化」、「月を構成する物質の分布・密度」すなわち「月の内部構造」が明らかになることにある。 月周回軌道上の宇宙船の速度(変化)は、太陽の重力、地球の重力、および月の重力によって決定される。これらのうち、太陽の重力及び地球の重力の影響(数値)は既に判っているので、「宇宙船の速度(変化)」から「月の重力の位置的な変化」を求めることが出来るのである。 さらに、得られた「月の重力の位置的な変化」から、月内部の「物質の分布・密度」すなわち「構造」を推測することが可能となる。 この実験によって MASCON(マスコン/重い物質) と呼ばれる重力異常地帯の存在が明らかになっていくのである。 なお、宇宙船が地球に帰還した後はサブ・サテライト(Subsatellite/無人の月周回人工衛星) に引き継がれる。 また、月の重力の時間的変移についてはアポロ17号の Lunar Surface Gravimeter で研究された (残念ながら実験は失敗)。 X-ray Fluorescence Spectrometer Experiment /SIM Gamma-ray Spectrometer Experiment /SIM 宇宙空間で暴れ回っている宇宙線 (cosmic rays) が月面の特定の物質に照射されるとガンマ線を発する。この原理を基にして、分光計でガンマ線を計測し、月面上の物質 (元素) の分布を調べるのがこの実験であり、チタニウム (チタン) 、トリウム、鉄などの分布を調べることが出来た。 この実験はアポロ15号及び16号で行われた。 ※ 2005年10月、NASAより、ハッブル宇宙望遠鏡による高精度紫外線観測で月面上広範囲に分布するチタン鉄鉱を確認できたとのリリースがあった。 観測対象エリアは、アポロ15号・17号のランディング・サイトと、アリスタルコス・クレーター (Aristarchus Crater /23.7N,47.4W) 及びシュレーター谷 (Vallis Schroteri /26N,51W)で、月面上にはチタン鉄鉱=イルメナイト (FeTiO3) が豊富に存在することを再確認したことになる。 もっともこれは、Gamma-ray Spectrometer 実験 及び持ち帰ったサンプルなどから既に予想されていたことだったが、、、 Alpha Particle Spectrometer Experiment /SIM 原子核がアルファ崩壊する場合、アルファ線を発する。これを利用して月面の物質 (元素) の分布を調べるのである (アルファ粒子検出器)。月周回軌道上では ラドン-222とポロニウム-210 が、アリスタルコス・クレーター (Aristarchus crater) ではラドン-222※ が、そして、月の裏側の 危機の海 (Mare Crisium) と Van de Graaf ではポロニウム-210 が、夫れ夫れ確認された。 この実験はアポロ15号及び16号で行われた。 - - - - - Orbital Mass Spectrometer Experiment /SIM 月の大気の測定。 Bistatic Radar Experiment /SIM 月周回軌道上の CSM(アポロ宇宙船)から月面に向けて電波を発信して、月面から跳ね返ってきた電波をカリフォルニアの追跡ステーションが記録し、月面の状態を観測するものである。アポロ14号、15号、16号で行われた(イメージはアポロ15号の CSM である。特徴的なアンテナが確認できる)。 ここにいう月面の状態とは、月面の凹凸や粗さ及び電気特性(特に、月面の岩石の誘電率)のことである。それらを観測する目的で「Bistatic Radar」実験が考案された。 なお、アポロ17号の Apollo Lunar Sounder Experiment や Surface Electrical Properties も参照。 重量約38kg の月周回軌道上の無人の人工衛星(地球から見れば無人の人工孫衛星) は、アポロ宇宙船のクルーが地球への帰還に先立って月周回軌道上に投入する。この実験はアポロ15号及び16号でのみ行われた。 CSM (司令船、機械船) で行われた S-Band Transponder Experiment の無人版ともいえる。つまり、重力・磁場 (磁気) ・帯電粒子の、地域的及び時間的な変動を観測するのである(宇宙船が地球に帰還した後も継続して調査する必要性があったということなのか)。「重力・磁場 (磁気) ・帯電粒子」 という要素から、あることを想像する人がいるかもしれないが、その点についてはノーコメント。 |
ALSEP は月面上における各種実験装置群(パッケージ)で、セントラル・ステーション(Central Station)を核として、そこからケーブル類を介して各種実験機器(コンポーネント)へコネクトされている。いくつかの実験は飛行士たちが帰還した後も続行されて地球にデータを送信していた。 ALSEP への電源供給は、フィン状(45度間隔で8枚)の外観が独特の原子力発電機 ※(放射性同位元素発電機 /The Radioisotope Thermal Generator /RTG)によってなされ、実験及び地球との通信を可能としている。 ※ 原子力発電機 RTG については環境保護の観点から疑問を呈する声もある。 アポロ12号RTG、16号RTG を参照。 |
月面の土壌を力学的にチェックし、それら土壌が人間の活動(動作)に及ぼす影響を調査するものである。月面着陸を行なった全てのアポロ有人月着陸ミッション(11号、12号、14号、15号、16号、17号)で行なわれた。チェックは、様々な器具(硬度計、ロッドなど)を使用して、いくつかの特性(硬度・強度、粒子密度など)について実施され、それに付随して、サンプル採取や写真撮影も行なわれている。 月表面の土壌は、10〜20cmぐらいの深さまでは容易にサンプリング・チューブを打ち込ませてくれるが、それ以上の深さとなると何らかの「技」を必要とする。例えば、70cm(これが最深)の深さまで打ち込むには、ハンマーで50回ほど叩く必要があった(アポロ15号、16号、17号では電気ドリルを使用できた)。 月表面の土壌は、微粒子状の細かい塵が堆積したようなもので、LM(月着陸船)の着陸時にはロケットの噴射で巻き上げられて雲のように辺りを覆い尽くした(全ての着陸シーンがそうだったわけではない)。さらに、これらの塵(のような土壌)には静電気を帯びたものもあって、宇宙服や実験機器などに張りついて飛行士たちをてこずらせた。 以上のような特性を持つ土壌ではあるが、LM、飛行士、実験機器、LRV(Lunar Roving Vehicle /月面車)を「埋没しない」程度には支えてくれた。もっとも、微粒子状故に「めり込み」は激しく、飛行士、各種機器、LRV(車輪)で1〜2cm、LM(フッドパッド)に至っては2〜20cm土壌にめり込んだ。 |
実験パッケージ ALSEP に含まれている磁気計によって月における磁気レベルを計測するものである。この実験はアポロ12号、15号、16号で行われた。月の中心核 ※ は「地球のような(鉄などがドロドロに溶解している)中心核」ではないので、磁場などあろうはずもないと思われていた。しかし、計測結果によると、月においては、「地殻」に該当する部分に磁気を発生させる源があり、さらにそれには地域的な格差が存在することが判明した。 なお、アポロ14号及び16号では、異なる地点で磁気を計測して、磁気の地域的な格差を明らかにし月の磁気の正体を解明する Lunar Portable Magnetometer が行われている。 ※ 月にも中心核(直径約450kmで、鉄を含む)自体は存在するが、地球のような高温の核ではない。 |
太陽風は磁場を伴った電子や陽子を含む帯電粒子のプラズマ流で、地球の磁場に絶えず影響を与えている。磁気嵐やオーロラの発生は太陽風が原因である場合が多い。彗星の尾が出現するのも同様である。フレア(太陽面爆発)直後の太陽風は尋常ではなく 10,000個/1立方cm の粒子密度で飛び出してくる。 その太陽風を月面上で捕らえる実験が、アポロ11号、12号、14号、15号、16号 各ミッションで行われた。実験装置は 1.4m x 0.3m のアルミ箔のシートをポールに備え付けたもので、太陽の方角に向けられている。このアルミ箔シートを 77分 (11号)〜45時間(16号) 太陽にさらし、地球に持ち帰って分析する。月面上では、地球上のように磁場や大気層の影響を受けずに太陽風を捉えることができるのである。 アイソトープ(同位体)を分析してみると、ヘリウム-3、ネオン-20、ネオン-21、ネオン-22、アルゴン-36 などの存在が確認された。 |
太陽は帯電粒子のプラズマ(その95%以上は電子や陽子)を絶えず宇宙空間に放出している。これが太陽風である。地球の磁場(磁気圏の厚さ)が太陽側とその反対側とで4〜5倍の開きがあることや、太陽のフレア現象のときに起こる磁気嵐、あるいはオーロラの発生など、全て太陽風が地球の磁気圏や大気圏上層部に影響を及ぼした(捕らえられた)結果といえる。つまり、地球にあっては太陽風は地表まで到達出来ないのである。 それでは、月においてはどうだろうか。月にはごく僅かの大気が存在するが、それは地球のような規模ではなく、太陽風が月表面まで容易に到達出来てしまう。いわば、太陽風の観測には絶好の環境といえるのである。もっとも、月は地球の磁場の影響を少なからず受けているので、到達する太陽風が常に同じプラズマ流(粒子の密度・速度)であるとは考えにくい。実際のところ、それらは地球の磁場の影響如何によって2倍程度の開きがあったのだ。 この太陽風分光計(スペクトロメーター)による観測実験は、アポロ12号および15号でのみ行われている。なお、太陽風捕獲実験(Solar Wind Composition Experiment)も参照のこと。趣向が少々異なるが同じく太陽風に関わる実験である。 |
この実験は、月の地震(以下月震)を記録して、そのデータを地球に送信し、月の内部構造を明らかにするものである。アポロ11号、12号、14号、15号、16号 各ミッションで行われた。 人工的な月震を発生させるためにサターンV型ロケットの三段目(S-IVB) と 月着陸船の上部コンポーネント(Ascent stage)を月面に激突させる試みもなされた。アポロ12号、14号、15号、16号で実施されたPSEでは観測データを1977年9月まで地球へ送信している。※1 各サイトの地震計で構成される「ネットワーク」は、(1) 流星(500g〜5000kg)が1700回以上衝突したこと、(2) 月震の殆どは地下800km〜1000kmで起こること、(3) 月震は一ヶ月ほどのインターバルで発生していること※2、(4) 月震の大部分はマグニチュード2以下であること※3、 などを記録していた。 この実験から、(1) 月の内部構造が地球と同じように、地殻、マントル、中心核などで構成されていること※4、(2) 地殻は厚さが60〜70kmほどあって斜長石を多く含んでいること、(3) マントルは橄欖石や輝石に富んでいること、(4) 中心核は鉄や硫黄で構成されている公算が強く、その半径は450km以下で月の半径(1738km)の25%程度であること(地球の中心核は地球半径の54%ほどある)などが判明(推測も含む)したが、より正確を期すためにも、月の磁気レベルを計測する LSM(Lunar Surface Magnetometer)などの成果が待たれる。 ----- |
月面に設置した反射装置に地球側(*A)からレーザービームを照射して地球と月の間の正確な距離を測定する実験である。イメージの装置が月面側の反射装置(Laser Ranging Retroreflector)だ。アポロ11号、 14号、15号で行われた。 月と地球の平均距離は 384,400km(最大 406,700km、最小 356,400km)であるが、この実験によって月が地球を回るその公転軌道が変動していることを確認した。年間 3.8cmの割合で月は地球から遠ざかっているのである。 この測定実験は、今までの我々の知識(*B)を修正し、なおかつ、アインシュタインの相対性理論の検証にも役立った。 ----- |
この実験は、月表面の熱イオンを検出する実験で、月表面から帯電したイオンを検出すると共に、太陽風や地球の磁気との相互作用についても研究する。アポロ12号、14号、15号の各ミッションで行なわれた。 この実験で対象とされるのは、50電子ボルト(&秒速69km)以下のイオンで、それ以上の素粒子については、アポロ14号の Charged Particle Lunar Environment Experimentや、アポロ16号、17号の Cosmic Ray Detectorで研究される。 検出されたイオンの源は、(1) 太陽風、(2) 月の大気が太陽の紫外線でイオン化されたもの、あるいは(3) 流星体の衝突により放出されたガス、であると思われる。さらに、(4) 月面に激突した LM (月着陸船上部コンポーネント /ascent stage)やサターン・ロケットの第三段(S-IVB)の推進剤等も無視しえない。 |
月の大気圧(分子数)を測定する実験である。月は非常に希薄ではあるが大気(気体分子群)を持っている。ただ、重力が小さい(脱出速度が小さい /月表面で秒速2.38km)ために大気が容易に宇宙空間に逃げてしまうのだ。月にとどまっている大気にしても太陽からの紫外線でイオン化されたり太陽風で飛ばされたりする運命にある。 この実験で計測された大気圧(分子数)は夜間で、1立方センチメートルあたり約200,000個の分子数である。これは、地球の大気の 100,000,000,000,000分の1 にすぎない(しかしゼロではないのだ) ※ 。 この実験は12号、14号、15号で行われた。12号は短時間の実験であったが、14号と15号では月面に残された観測機器が1971年〜1975年まで観測結果を地球に送信していた。ただし、12号〜15号においては、月の大気の構成(気体の種別や割合等)までは観測されない。大気の成分・構成については17号の 「Lunar Atmospheric Composition Experiment」 を待つことになる。 ※ ランディング・サイト周辺の大気には、LM(月着陸船)の降下用ロケット・エンジンや宇宙服等から排出されたガスも含まれている。 |
実験の結果、1平方メートルあたり21ミリワットのヒートフローを記録した (アポロ17号では16ミリワット)。地球の場合の 「87ミリワット(平均)」 と比較すると月のヒート・フラックス (heat flux) は地球の場合の18〜24%程度なのだ。但し、月のヒート・フラックスは地形 (海、高地など) によって幾らかの偏りがあるようだが。 以上のことは、月の天体としてのサイズや火山活動が終焉した時期 (約30億年前) などから予想されてはいた。 |
月面に積もっている塵の層を研究する実験がアポロ11号、12号、14号、15号で実施された。LDD の実験機器は ALSEP(Apollo Lunar Surface Experiments Package)のセントラル・ステーション(核となる機器群)に含まれている。 アポロの有人月着陸以前は、かなりの量の塵が積もり層をなしていたと考えられていたが、実際に測定してみると、塵の層は予想されていた規模を遥かに下まわっていた。 この実験は、どちらかというと放射線や熱による太陽電池の劣化を調査することに主眼が置かれていた。いわば、科学よりも工学に寄与した実験といえる。 |
Galileo's Gravity Experiment (Dropping the Hammer and Feather) |
ハンマーと羽根(タカの羽根)を同じ高さから同時に落下させて、ガリレオ・ガリレイの「落体の法則」を月表面上で実証した有名な実験。およそ160cm(120cm?)の高さから落下させたハンマーと羽根は当然のごとく同時に着地し、実験は成功した。実験者はデービッド・スコット船長。なお、この実験の模様は月面車(LRV /Lunar Roving Vehicle)にマウントされていたTVカメラ (RCA Color Television Camera)で撮影されている。 この実験を突発的に行われたユーモラスなデモンストレーションととらえるむきもあるが、実は、この実験は事前に計画されたもので、「月表面上に空気抵抗(大気)が無いこと及び実験の場が地球上ではない(月面上である)こと」を証明する確固たる意義・意図を含んでいた。 |
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